ユング心理学の世界へようこそ

ユング研究所を作った目的とは

どんな道にも、いわゆる「師弟関係」というものが存在しますよね。
ある理論や教えの価値が高ければ高いほど、

「それを受け継ごう」「後世に残そう」
という意識の高い弟子たちが集まってくるものです。

 

ユングの教えも、然り。
とはいえ、ユングは、技法や理論を体系的に学ぶだけで

資格が与えられるような制度を好みませんでした。

 

それは、彼の心理学の特性を考えれば良く分かりますよね。
その人が、その人なりに肯定できる生き方を見つけるお手伝いを

するわけですから、知識やテクニックがあるだけではダメ。
まずは治療を行う人自身が自分自身の考え方のクセを細部まで分析し、

自分自身の心の問題を知る必要があります。

 

そうでなければ、相談者を客観的に観ることなどできないでしょう。
相談者の言動にいちいち反応してしまって、

とても治療にはなりませんからね(笑)。

 

そこでユングは、1948年に、
チューリッヒに「カール・グフタス・ユング研究所」を設立し、

ユング派の分析家を養成する教育カリキュラムを始めました。

 

この時、ユングはすでに73歳。
誕生日プレゼントとして、

弟子のヤコービーが研究所の設立を考案したのだそうです。

 

この研究所で行われる教育は、
ユング派の分析家を目指す人自身が心理療法を受ける

「教育分析」に重きをおいているのが特徴的。
人の心を観る前に、まずは本当の自分自身と向き合うことが求められます。

日本でのユング派第一人者といえば…

この「ユング研究所」、実は、今もあるんです!
しかも、今ではスイスのみならず世界各国の主要都市に解説されており、

ユング派の分析家を養成するためのシステムが確立しています。

 

卒業までの所要年数は、約5年といったところ。
…なかなか厳しいでしょう(笑)?

単にユングの著書で勉強したからといって
誰でも「ユング派」を名乗れるかといえばそうではないのです。

 

日本で最初にユング派分析家の資格を取得した人物としては、
京都大学の河合隼雄先生が有名ですね。

日本でこれほどまでにユング心理学の知名度が上がったのは、
河合先生の尽力の賜物と言っても過言ではありません。

 

河合先生は、日本人と西洋人の心の構造に違いあることを
指摘したことでも知られていて、

ユング心理学を日本人に当てはまる形に修正した人物としても有名です。

ユング研究所のカリキュラムとは?

現在、正当な「ユング派分析家」を名乗ることができるのは、
世界でも3000人以下。

日本にいたっては、わずかに数十名ほどです。
(2008年時点では50名以下)

 

これを聞くと、
「ユング研究所の教育ってすごいシビアなんだ〜」

って改めて痛感しますよね。
実際、研究所での訓練はかなり厳しいようです。

 

教育はまず、「分析家候補生(Training Candidate)」になることから
スタートしますが、たとえ候補生といえども、

「年齢26歳以上で、大学院修士号以上の学歴と、社会経験、
そして50時間の分析(を受けた)経験があること」

という条件に合致しなければ試験を受けることすらできません。

 

さらに、この条件を満たした人でも、
3人のプロの分析家がみっちり面接して「向いているかどうか」を判断します。

1時間×2回×面接官3人=計6時間。
しかも、3人が全員一致で許可しなければ、

「候補生」にもなれないのです。

 

晴れて候補生になった場合、ここからはとにかく
「自分が分析を受けること」がメインの教育となります。

一応、講義やセミナーもあるようですが、さほど重要視されていないようですね。

 

2年後、次に待っているのは「資格候補生(Diploma Candidate)」の過程。
これも、やはり試験と面接をクリアしなければ進級できません。

 

この過程でも、やはりメインは「分析を受けること」。
ただし、教育分析だけではなく、

いよいよ自分がクライエントに対して「分析を行うこと」も含まれています。

 

そして2年…。

 

最後の試験&面接をクリアすれば、研究所を卒業して、
見事あなたも「ユング派分析家」◎

ここまでの道のりは長くて険しいです…(汗)

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