ユング心理学の世界へようこそ

オカルトとは?

ユングといえば、いわゆる
「オカルト」と呼ばれる現象との関わりが有名ですよね。

 

でも、オカルトって一体何なのでしょう?
一般的には「怪しい」という先入観で見られがちな分野のようですが、

ユングが研究の対象にしたくらいですから、
きっと奥の深い分野なのでしょう。

 

そもそもオカルト(Occult)とは、
「隠されたもの」「秘密」を意味するラテン語。

目で観たり触れたりといった物理的な確認ができないことを指して
このキーワードが使われるようです。

 

特に、16世紀中頃から「理解を超えたもの」という意味を超えて、
魔法や錬金術に関連するものを表すようになったようですね。

確かに、魔術や超能力の類は目で見て明確に証明することが難しい力。
「存在する」といえば存在するような気もしますし、

「そんなのはインチキだ。そんな力は存在しない」と言われれば
そんな気もする…。

 

みなさんも、子供の頃に「コックリさん」とかやりませんでしたか?
あれも、言って見ればオカルト現象の一種。

霊が降りてきていると言わればそんな気もしますが、
誰かが鉛筆を動かしているだけだと言ってしまえばそれまでです。

 

このしごく曖昧なテーマにもユングは果敢に立ち向かい、
結果的にはオカルト現象と私たちの心の動きの関係性を見いだしたのです。

神秘的な力を持つ母方の家系

ユングがオカルト現象に興味を抱くようになったきっかけの一つに、
母方の家系の特異性が挙げられるでしょう。

 

母親は、プロテスタント教会の牧師の娘でしたが、
その家系がとにかくミステリアス!

自分自身もその母も、姉妹も霊能者だったのだとか。
宗教的・霊的な色彩の強い謎めいた家系だったようで、

ユングも多分にこの影響を受けていたようですね。

 

とりわけ印象的なのは、従姉妹の「ヘリー」こと
ヘレーネ・プライス・ヴェルクとのエピソードです。

彼女を霊媒とする降霊会が度々開かれていたようですが、
その会でヘリーは、あたかも本人であるかのように

亡くなった祖父の口調で語り始めたり、
とうてい知り得ない学問的(哲学や神秘学など)知識を披露したり…。

 

またある時には、約70年の歴史を持つテーブルを真っ二つに割ったり、
パンナイフをバラバラにしてしまったり。

もちろん、力づくで割ったわけではありませんよ(笑)

 

ユングの考えによれば、これらの現象は
ヘリーの霊能力と関わりがあったようです。

 

 

霊媒とは?
死者を自らの身体に宿らせ、死者の気持ちを語る人のこと。

オカルト現象を冷静な目で受け止める

ヘリーを霊媒とする降霊会にまで参加していたというユングは、
傍からみれば「オカルトにかぶれた変わり者」。

 

「なんてもの好きな…」と嘲笑う方もいるかもしれませんが、
ユングは単に好奇心だけでオカルト現象を見ていたわけではないんです。

彼は、降霊会でのヘリーの様子を実に冷静に観察していて、
なんとこれで博士論文まで書いてしまったんです!

 

これが、有名な『いわゆるオカルト現象の心理と病理』という論文。
この中でユングは、ヘリーの例をなんと「人格交代」、

いわゆる「多重人格」として扱っているんです。
当時の心理学会は騒然だったでしょうね(笑)。

 

彼が「人格」というものに目をつけた背景には、おそらくは、
母親が持つ二面性の影響があるのではないかと思われます。

ユングの母親には「親しみやすく愉快な女性」という面と、
「不気味で得体の知れない女性」という面の二つの人格があったのだとか。

 

後者の人格が出てくると、強い口調で物事の核心をつく発言をすることもあり、
ユングはかなりの戸惑いを感じていたようですね。

 

こうした身近な体験が後の研究に生かされていくですから、
人生は分からないものです。

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