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拡充法とは?

ユングは、夢を分析する方法として
「拡充法」という方法を提唱しました。

 

これは、一つのテーマから連想されることを
物語(昔話や神話)との共通点から理解していく…というメソッド。

例えば、ライオンが出てくる夢を見た場合、
「ライオン=怖い。ライオン=王さま」…といった具合に、

物語に見られるモチーフを使って夢を膨らませていくのです。

 

これは、「ライオン=怖い=父親」といった
“連想”とは異なる夢の解釈法です。

 

では、ユングはなぜこの拡充法を用いたのでしょうか?

 

それは、「夢を普遍的なイメージに関連付けるため」と言われています。
「夢の個人的な文脈をハッキリさせるため」に用いる連想法とは

ハッキリと区別して使い分けていたようですね。

 

拡充法のように、物語のモチーフを導入して夢を解釈しようとすると、
なかなか連想は膨らまなくなるものです。

上述の例も然りで、父親から先ならいくらでもイメージが膨らみますが
王様の先はなかなか連想しづらいのではないでしょうか。

 

そこで、全人類に共通の普遍的なイメージ=集合的無意識の領域にある
イメージと関連付けることによって、

その夢の意味を深めていこうとしたのです。

フロイトとユングの夢分析の違い

夢分析の権威といえば、ユングよりもフロイトのほうが有名です。
しかし、夢の解釈については、両者の見解は大きく違っています。

 

まず、夢の分類法について。
フロイトは、夢を“潜在夢”と“顕在夢”に分類しました。

前者は、“超自我”による検閲を受ける前の原初的な願望の表れ。
一方、後者は、検閲を受けて願望が変化した形で表れるもの。

 

これに対してユングの分類は、“客体水準”と“主体水準”です。
前者は、内容が実際の外界の内容を表している夢。

後者は、内容が個人の心の中の特性を表している夢です。
ユングの解釈によれば、夢に表れる人物はどれもその本人を表しており、

嫌っている人物=自身の中の受け入れたくない一側面を
意味しているのだとか。

 

フロイトの夢判断では、
夢の意味を“固定的”なもの限定する傾向があり、

その点にユングは強く反発したと言われています。

 

例えば、フロイトの理論では、どんなものでも
男根や女性器になぞらえる傾向があります。

なぜなら、フロイトは基本的には
「夢=願望充足」と考えていたからです。

 

これに対してユングは、夢に性的な意味を認めず、
内的な発達、“個性化”と関係づけて解釈しようとしたのです。

 

もちろん、「どちらが正しい」という議論はできません。
ただ、その心理療法家がどちらの考え方・手法を支持するかによって

治療方法が違ってくるということです。

ユング自身の体験と拡充法

ユングが拡充法を提唱した背景には、自身の体験がありました。
これは有名なエピソードですが、ユングは、

秘密仏教における“曼荼羅”に強い関心を寄せていたと言われています。

 

具体的には、曼荼羅のような“同心円構造”のモチーフが、
洋の東西を問わず古今東西で

伝統的に使われていることに気付いたのです。

 

ユングによれば、この同心円構造を持つ図形というのは
私たち人間の“心の中心”を表しているのだとか。

分かりやすい例を挙げるとするならば、
宗教的シンボルとして使われる曼荼羅と、ダーツの的の間には

共通点があるということです。

 

確かに、地理的・民族的にてんでバラバラな国の間で
共通するモチーフがあるというのは面白いですよね。

生物学的に見れば、DNAの概念と良く似ているようにも思えます。

 

身近な人と“夢”を比較してみると、
似たようなモチーフが登場している可能性大!

夢の報告会を開いてみるというのも楽しいでしょうね。
共通の話題としてもなんら害がありませんし。

 

あなたも今日から夢日記をつけてみませんか!?

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