ユング心理学の世界へようこそ

心理療法のテクニック

ユングが提唱した心理療法のテクニックの一つに、
「アクティヴ・イマジネーション」があります。

あまり広く知られていないようですが、
多少なりとも臨床心理学をかじったことがある方ならご存知なのでは?

 

アクティヴ・イマジネーションは、
精神分析と心理療法のためのテクニック。

私たちが日常生活の中で何の気なしに行っている
“想像”=イマジネーションという行為が持つ意味を

徹底的に追求するものです。

 

具体的には、ある想像を一定期間(○週間、○カ月)にわたって
1つのストーリーとして発展させてみるというもの。

実際にやってみるとよく分かりますが、
意識と無意識の間で、キャッチボールをしているような感覚で、

最初の想像が自分でも意外な方向に進んでいくことがあって面白いものです。

 

心理治療としてのみならず、自分の内面を見つめ直したり
想像力の可能性を探るという意味でも、

一度はトライしてみることをオススメします。

アクティヴ・イマジネーションの使い方

アクティヴ・イマジネーションは、臨床の場では
具体的にどのように用いられるのでしょうか?

 

アクティヴ・イマジネーションの目的は、
心を自由にさせてあげることであり

意識による束縛を解いて心の緊張を緩めてあげること。
そうすることによって、面白いほど豊かなイメージが展開されます。

 

睡眠中の“夢”とよく比較されますが、
イメージは意識が覚醒している状態で生成されるものであって、

夢とは違います。

 

ユングによれば、イメージは“無意識”に由来するものであって、
自律性を持っているのだといいます。

つまり、「こうしよう」とか「ああしよう」とかいった“意識”とは別で、
ある意味では勝手にどんどん展開してしまうんですね。

 

ですから、当初のカタチから大きくずれて、
思わぬ展開になることも珍しくありません。

ユングは、そこに
「心を一つの全体にまとめようとする無意識の働き」を見出したのです。

これこそが、ユングの代表的な思想である「個性化」のプロセス。
つまりは、心の成長であり、“癒し”のプロセスなわけです。

 

自分の内側から自然に湧いてきたイメージに真摯に向き合い、
そのメッセージをいかに受け止めるか。そして、いかに答えていくか?

これが、いわゆる“治療”の過程なんですね。

 

ちなみに、無意識由来のイメージとはいえ、
自我の側の自律性を保ち続けることも大切だとユングは言います。

自我がどれだけ“アクティヴ”であるかが、
無意識の働きにも影響してくるのだとか。

 

つまり、自我と無意識の間のキャッチボールを楽しむような感覚
それがアクティブ・イマジネーションの理想的なあり方と言えるでしょう。

アクティヴ・イマジネーションの実践

では、ユングのアクティヴ・イマジネーションとは
どのように実践されるのでしょうか。

 

一例としては、次の10段階で行われます。
ただ、これはあくまでも一例であって

「こうでなければならない」という決まりはないのだとか。
大事なのは、各人がそれぞれ自分なりの方法を工夫すること。

言わば、十人十色で、イメージを楽しむことです。

 

@充分な時間と空間を確保する。
Aイマジネーションの出発点を決める。

Bイメージが動き始めるまで、自分の内面を注意深く観察する。
Cイメージが動いたら、その意味をよく考える。

Dこちらの取れる行動の選択肢を考える。
E行動を選択し、実行に移す。

F(イメージの)相手の反応を待ち、C〜Eをくりかえして先に進める。
G記録する。

H分析家に報告する。
I経験したことを受けとめる。

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