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謎多き父方の家系

ユング心理学では、「男性性」「女性性」が重要なテーマになっています。
確かに、男女を問わず、私たちの中には

男性的な面もあれば女性的な面もありますよね。
それは、「異性に何を求めるか」ということにも関係しています。

 

ユングがこのような心理学理論を考えるに至った背景には、
自身の父親の存在があります。

 

父親であるパウル・ユングは、プロテスタント教会の牧師で、
言語学の博士の学位を持つ人物。

さらに祖父は、バーゼル大学の医学部教授で、
総長を務めたことのある人物であったといいますから、

かなりアカデミックな家系に育ったと言えます。

 

しかもこの祖父には、かの有名な文豪、
ゲーテの私生児だったという噂があったというからビックリですよね!

また、フリーメーソンという秘密結社の中心的メンバーだった
という説もあり、色々と謎の多い人物であったことが伺えます。

 

フリーメーソンとは?
18世紀前半に成立。

具体的な活動は非公開ですが、学校設営や
慈善団体への資金援助などのチャリティ活動も行っているようです。

父親に対して抱いた不信感

ユングが残した記述によれば、父親は「たいてい機嫌が悪く、
慢性的にイライラしていた」人物だったのだとか。

 

その背景には、
「学問の道を諦めて牧師になった」という挫折感が見え隠れします。

 

幼い頃から知的好奇心が旺盛だったユングは、
キリスト教の三位一体(神・イエスキリスト・聖霊)の意味について

詳しく説明して欲しいとねだったりしたようですが、
父親は「とにかくそうなっているんだ」という

曖昧な回答しかくれなかったのだとか。

 

聖餐式についても同様で、
葡萄酒とイエスの血として飲んだり、

パンをイエスの身体として食べたりすることにどんな意味があるのか
父親に尋ねたようですが、満足な答えをもらえなかったのだとか。

 

この当時から、ユングは父親に対して不信感を募らせていったようです。

 

人々を教え導く役割があるハズの牧師が、
自分の息子1人納得させられないというのはちょっと頼りないですよね。

 

息子の目には、
「お父さんはいやいや牧師をやっているんじゃないか」

という風に映ってしまったのではないでしょうか。

解決されなかった疑問

「父親も、母方の祖父もプロテスタントの牧師」という家庭に育ったユングは、
幼い頃からキリスト教や「神」というものに

様々な疑問を感じていたようです。

 

何か分からないことがあった時、幼い子供は
「お父さんに聞けば教えてもらえるハズ!」と思うものですよね。

しかも、父親は牧師だったわけですから、
キリスト教について何でも知っているハズだと。

 

しかし、父親は曖昧な回答しかくれません。
ユングを生涯に渡って苦しめた

「神がいるのに、どうしてこの世は
これほどまでに恐ろしいことや悲惨なことで満ちているのか」

という疑問について、全く答えてくれなかったのです。

 

やがてユングは、
「父は神の存在を直接体験したことがないのだ」

と見抜き、そんな父親に対して失望し、不満や怒り、
哀れみまで感じるようになっていくのです。

 

自分にとって本当の意味で「父親」と思える人はいないとまで
思っていたんでしょうね。

だからこそ、フロイトとの出会いは衝撃的だったわけです。
実の父親が答えをくれなかった疑問を、フロイトは解決してくれる!

…そんな期待感があったんでしょうね。

 

そんな父親も、ユングが20歳の時に他界。
一家の大黒柱を失った家族は、

ますます貧乏な生活を強いられるようになったそうですが、
ユングは多額の借金を背負ってまで学業に邁進したそうです。

 

かなりの苦労人だったことがうかがえますよね。

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